破砕機によってチップに砕かれた燃料はコンベアでボイラーに送られ、燃焼し水を沸騰させて高温・高圧の蒸気を発生させます。この高温・高圧蒸気(6MPa、450℃)を使って多くの羽根車を内蔵している蒸気タービンを回し発電をします。その工程についてご紹介します。
ボイラーとタービンを使った発電の仕組み
木質バイオマス発電は、発電用燃料として間伐材などの木を使うことが特徴ですが、発電方式は「ボイラーでお湯を沸かし、蒸気でタービンを回して発電する」という石炭や石油、天然ガスなどの火力発電所と同じ仕組みです。
この仕組みを簡単に図にすると、このような形になります。
燃料投入~発電までの流れ
①燃料チップをボイラーに投入する
破砕機で生産された燃料チップは、燃料サイロに一度貯められ、ここからコンベアでボイラーに送り込まれます。
ボイラーは24時間連続稼働しているため、このサイロからは絶えずチップがボイラーに送り込まれていきます。
②チップを燃焼して高温・高圧蒸気を作る
ボイラー内部では、チップが高温で燃焼しています。内部には水が通る管があり、この中で水が沸騰し、高温・高圧の蒸気を作り出していきます。
このボイラーは、バイオマス発電のために作られた「木質バイオマス流動層ボイラー」です。(後ほどご紹介します)。
稼働中のボイラーの中の様子を燃焼確認用の覗き窓からの動画で紹介します。
【動画】覗き窓から見たボイラー内部の燃焼の様子
③高温・高圧蒸気で蒸気タービンを回し、発電する
ボイラーで作られた蒸気は、ボイラー棟の隣にあるタービン・発電棟に送られます。ここで蒸気タービンを回し、電気を作り出します。
蒸気はタービンで仕事をしたのち、蒸気タービンの下に設置された復水器で冷やされて水に戻り、再びボイラー水としてリサイクルされます。
「木質バイオマス流動層ボイラー」について
木質バイオマス発電所の設備で、発電機、蒸気タービンなどは他の発電所でも使われる標準的なものですが、最も特徴的な設備はボイラーです。
当発電所で使用しているボイラーは「流動層ボイラー」と呼ばれる形式のものです。
ここで燃料として使われる木質バイオマスは、化石燃料と比べると燃料形状が多様で水分が変動するため、安定して燃焼させるためには様々なノウハウが必要です。そのため、ボイラーには様々な工夫がされています。
ボイラーの仕組み
「燃焼砂ベッド」を使って、効率よく燃料を燃やす
このボイラーの燃焼室下部に「硅砂」という砂が約50トンほど入っています。図にある「燃焼砂ベッド」という部分です。その砂の中に燃焼用の空気を送るための管がたくさん並んでいて、パイプの下の穴から燃焼に必要な空気が送り込まれています。
その空気を送り込む力で砂を流動させます(お風呂のジャグジーのような状態になります)。ここに燃料となるチップが投入されていきますが、流動している砂の影響でチップは一箇所に堆積せず拡散するため、チップが効率的に燃え尽きるようなしくみになっています。
このとき、高温の砂によりチップが含んでいる水分が蒸発、次に可燃分である揮発成分に火がついて燃焼していきます。揮発分が燃え尽きると次に炭の部分が時間を掛け燃えていきます。このようにチップの形状に係わらずすべての可燃成分が燃え尽きるまで燃焼砂の上で流動し続けます。
燃焼砂は高温で50トンの大きな熱容量を持っているため、チップ水分の変動を吸収して安定的に燃焼を継続させます。
こうしてチップを燃焼させて発生させた熱をボイラー内の水の配管が吸収し、中の水が沸騰して蒸気を作り出します。この蒸気を更に加熱して圧力6メガパスカル(大気圧の約60倍)、温度はおよそ450℃にします。この高温・高圧の蒸気で蒸気タービンを回す力を生み出していきます。
木質バイオマスを燃焼させるための工夫
この発電所のボイラーで特徴的なことは、この「砂を充填しておいて砂の流動で燃焼を促進すること」です。
化石燃料のボイラーではこのような砂は不要です。重油や微粉炭(石炭)のボイラーは燃料を直接噴射すれば燃焼します。
化石燃料よりも不均質な木質バイオマスを燃やすためには、ボイラー側でも工夫が必要になります。炉内で効率的に燃焼させるため、炉の中の砂に広く空気を送り込みながら燃焼させることが必要になります。
木質バイオマスを燃やすボイラーは他に「ストーカー焚きボイラー」や「循環流動層ボイラー」などがあります。
苫小牧バイオマス発電所では、燃焼効率が高く、チップの形状変化、チップの含水率の変動に柔軟に対応できることから「流動層ボイラー」の形式を採用しました。