年間6万トンの未利用材が、発電所に運び込まれている

4.木材の調達と貯蔵

年間6万トンの未利用材が、発電所に運び込まれている

発電の燃料となる木材は、年間60,000トンという量が発電所に運び込まれ、さらに乾燥させるために一定期間敷地内で貯蔵されます。その様子についてご紹介します。

お話:西尾調達部員(苫小牧バイオマス発電)
お話:山家さん(苫小牧埠頭株式会社)

発電用燃料となる木材について

(ここからのお話:西尾調達部員)

この発電所では、すべて北海道産の木材のみを調達して燃料にしています。道内にある他のバイオマス発電所では輸入材などを使うところもありますが、この発電所では100%北海道産のものだけです。

調達地域の大体の目安としては、発電所からおよそ150キロ圏内、ということになります。

地図で見ると、東は日高山脈の手前あたり、北は石狩や留萌の周辺くらいまで。西は八雲町から森町などです。

苫小牧バイオマス発電所の燃料木材

(FITにおける発電燃料の条件)
◆国有林、保安林
◆森林経営計画対象森林
◆人工林からの間伐材
※市町村に伐採届(間伐)を提出していること

燃料木材供給者

イワクラ
三井物産フォレスト
住友林業フォレストサービス
北海道森林組合連合会

1年間で6万トンの木材を燃料として使用する

今、発電所では1日に200トンの燃料を使用しています。年間300日稼働として、私たちの計画では年間に60,000トンの丸太を燃料として消費することになっています。

なのでそれに見合う量を調達しています。実際は60,000から 65,000トンの間、というところでしょうか。

60,000トンといってもなかなかピンと来ないかもしれません。トラック台数に換算すると、年間でトラックおおよそ3,000~5,000台というところでしょうか。

また、丸太の受入の他に林地残材の受入も行っています。林地残材とは、これまで使い道がなく山に放置されてきた末木枝条等のことを指します。林地残材を協力業者に山から収集してもらい、チップ破砕したものも受け入れるようにしています。

これまで行き場のなかった林地残材を発電所で積極的に利用することで、発電所としては燃料の安定調達につながり、山側に対しては伐採現場における地拵えの負担が軽くなる等の貢献ができると考えています。

林地残材の積極利用は木質バイオマス発電所の使命ですので、今後も林地残材の受入数量を更に増やしていきたいと考えています。

【動画】トラックが木材の荷下ろしをする様子

実際にトラックで木材がどのように受け入れられるかについて、トラックからの木材荷下ろし作業を動画で紹介します。

木材調達に適した季節は「冬」

これらの木材の調達時期は、季節によって多少の違いがあります。

間伐が秋~冬の寒い時期に行われるので、特に2月~3月は調達量が多くなります。多いと、一日で搬入のトラックが20台来る日もあります。冬は含水率(木がどのくらい水分を含んでいるかの割合)が少なくなるので木が切りやすくなるんです。

逆に春先は植える作業が多くて、あとは木を切って加工する造材です。林業ではこうした作業が多くなるので私たちのところにやってくる木は少なくなります。あと、春先は雪解けで山に入りづらいなどの事情もあります。

貯木場と「含水率」

貯木場の一部を、上空から撮影。

調達した丸太はすぐに燃料として使用するわけではなく、発電所の貯木場に一定期間貯蔵するようにしています。丸太在庫を一定量抱えることで、発電プラントの運転を止めることなく安定して燃料投入を行うことが出来ます。

また、それに加えて使用する丸太を乾燥させるという側面もあります。丸太は貯木場で半年から1年程度、自然乾燥されます。
もともと木材は水を吸っており、特に切ったばかりの木はたくさん水を含んでいます。この木が水を含んでいる割合を「含水率」と呼びます。

基本的に切ったばかりの木材をボイラーに入れて燃やすのは非常に難しい。濡れた新聞紙を燃やすようなものです。そこで自然乾燥させるわけです。出来るだけ木が乾いていたほうが、物を燃やすという意味では当たり前ですけど効率が良いです。

切ったばかりの木の含水率は樹種によって違いますが、例えば北海道でよく採れるトドマツは非常に含水率が高くて55%から45%。カラマツはそれよりは比較的低いです。スギは60%と一般的に言われてるんですけど、夏と冬でも含水率が違います。冬は水を吸ってないし、夏は水を含みますので、季節によっても10%くらい差が出たりします。

これを、燃料として使用するためにおよそ半年から1年程度乾燥させます。そうすることで含水率は平均で35~45%まで下がっていきます。

奥が運ばれてきたばかりの丸太、左手前が乾燥の進んでいる丸太。乾燥すると見た目が白くなる

発電プラントへ燃料を安定的に供給できるように、できるだけ多くの丸太をストックしておくことを優先していますが、その中でも、例えばある程度間隔を開けて木を並べたり、地面の水はけなどを意識した積み方をするなど、試行錯誤しながら効率的な乾燥の方法を日々探っています。

所内で使っている重機のこと

(ここからのお話:山家さん)

これら丸太の運搬作業は、すべて重機を使って行います。

発電所内で使用している重機は、まずパワーショベルが2種類あります。ひとつは、破砕機に木材を投入するときに使う「グラップル」という木材を掴むための装置がついたものですね。もうひとつは、チップヤードにあるチップをかきあげるためのバケツがついたものです。

それから、木材を運搬するためのブルトーザーも運転しています。スタッフは日によって、どの重機でもまんべんなく担当しています。

丸太を運ぶロガーを装着したブルトーザー

チップを運ぶブルトーザー

運搬時にも「含水率」を意識

現場では当然のことですが、まず事故が起こらないようにすることが基本です。重機を扱うわけですから、安全には特に気をつけています。

運搬時にも含水率を意識しています。ボイラーの燃焼効率が含水率によって大きく影響を受けるので、ボイラーの監視を担当しているスタッフと連絡を取り合いながら、その都度、燃料の加工場に運び込む木材を調整しています。

貯木場の中でも、乾燥の進んでいる場所やそうでない場所があるので、オーダーに応じて、乾燥したものとそうでないものをブレンドして貯木場から運び込みます。

ちなみに、含水率の高い木材は重機で持っただけでもわかります。重機で握って持ち上げると、水分を含んでいるから重いんですよ。

ボイラーの中の含水率が上がり過ぎてしまうとボイラーが燃焼できずに止まってしまうので、そうならないように木材を運び込む段階から意識して気を遣っています。そのことが、安定して電力を出力することにつながります。

貯木場で木材を運搬するブルトーザー

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