当発電所に見学にお越しになった方から、実はこんなご質問をいただくことがあります。
「発電のためにこんなに木を切って、森林環境は大丈夫なの?」
これらのほとんどは「間伐材」と呼ばれる、これまで林業では利用用途が少なく、森林に廃棄されることもあった木材です。
この「間伐」が行われることで森林はより健全に成長し、CO2吸収能力を高め、より環境に貢献しています。このページでは、林業にとって大事な「間伐」とはどんな作業なのか、間伐をすることがなぜ環境によいのか、当社へ燃料木材を供給して頂いている三井物産フォレスト社にお話しを伺いました。
人工林と天然林
三井物産フォレストは、三井物産の社有林「三井物産の森」を管理しています。その面積は全国でトータル約4万4千ヘクタール。
そのうち、約8割の3万5千ヘクタールが北海道にあります。三井物産が所有している森林の中でも古くから所有している森林を管理しているのが当所(平取山林事務所)です。
当所では、日高にある沙流(さる)、胆振にある似湾(にわん)、似湾乙(にわんおつ)、穂別(ほべつ)、上川にある占冠(しむかっぷ)の5山林、全部で1万2千ヘクタールの山林を管轄しています。
これらの山林は、自然の力で木が育っている「天然林」と、人の力で木を育てていく「人工林」の2つがあります。当所では全体のおおむね4割が人工林です。残りの6割が天然林となっています。
「間伐」とは?
人工林では、森林環境を保全しながら木を育てていくための作業が計画的に行われています。
その中で、定期的に行っているのが「間伐」という、生えている木のうちあまり成長していないものを伐採し、間引いて隙間をあける作業です。
まず、こちらの2枚の写真をご覧ください。
この2枚の写真、1枚目がまだ間伐されていない林、2枚目が間伐された林です。
間伐してないと…
1枚目のように木が密集した形で成長してしまうと、日光が当たっても下まで十分に光が届かなくなります。すると木はあまり枝葉を張らず、結果として木の成長が阻害されてしまいます。また、どうしても木の上部に枝葉が茂るような育ち方をしてしまうので、地面まで光が届きづらくなります。これがもうひとつの問題です。
また地面に生えている下草も、森にとってはとても重要です。地面にまで光が当たらないと下草が生えてきません。そのため土がむき出しとなって、風雨等によって土壌流出の原因となってしまいます。さらに木が根っこを張らなくなってしまうため、全体的に風に弱い山になってしまうのです。
間伐を行うと…
一方、2枚目の写真のように、木の成長の様子を見ながら時々ある程度間隔を開けて日光の入る森にすることで、木の一本一本がたくさんの枝葉を張るようになります。それだけ木の生育が良くなります。
下草も十分に育っており、土壌もしっかりした強度が維持できます。
間伐で伐採するのは、あまり成長していない木や生育のよくない木を選びます。つまり、より強い木を選んで育てるということにもつながります。
森林の環境を守り、よりよい木を育てるために、間伐は行われているのです。
また、間伐を行うことで残された木がより多く枝葉を張ることができるため、間伐をしなかった時と比べて結果的にCO2吸収能力が高まるという研究結果も出ています。
森林総合研究所平成16年度研究成果「間伐は人工林のバイオマス成長を促すのか?」
アニメーションによる解説
間伐の仕組みを、簡単にアニメーションで図解しましたので、こちらの動画をご覧ください。
天然林のこと
いっぽう天然林は基本的には自然のままですが、天然林における間伐も少しずつ最低限行っています。
さまざまな大きさの木が生えている天然の森林でも、他の木の生育の邪魔になっている部分や弱っている部分を間伐するなど、木の生育が健全に行われるように最低限の手を加える保全作業を行っています。
「森林認証」について
手入れのしやすさや木の成長のスピードなど、林業の効率という部分でいえば人工林の方が効率は良いのですが、いまある人工林はこれ以上拡大しません。これは「FSC」(森林管理協議会)という団体が定めている「森林認証」というものを当社が取得しているためです。
この森林認証は、森林の環境保全に配慮し、継続可能な形で生産された木材に与えられます。森林認証では、今ある人工林をこのまま人工林として活用することはOKなのですが、さらに人工林を増やして天然林を減らすことは認められていません。
その理念には、手つかずの原生林、天然林を保護するというものがあります。在来種などの植物も保護しなければいけませんし、その土地の生態系を維持するというのが何よりですね。また人工林は、植える樹種が単一になりがちですから、種の多様性という意味でも落ちてしまいますし、水・土壌といった公益的機能もやっぱり天然林の方が高いんです。
いまある人工林と天然林をうまく活用しながら、森林認証に沿った木材を生産する、ということを私たちは続けています。
※参考「三井物産の森に関するホームページ」
「三井物産の森」HP