木質バイオマス発電は、さまざまな制度や林業等の産業に支えられています。
再生可能エネルギーや林業との関わり、バイオマス発電の課題と今後について当社の考えをご紹介します。
再生可能エネルギーの今後について
再生可能エネルギー全体で言えば、たとえば太陽光発電などは海外の技術が先行しており、発電単価(発電するために必要なコスト)が下がってきています。日本では規制等もあってまだ発電単価は下がりきっていないのですが、やがて追従するようになるでしょう。
ただ一方、太陽光は太陽が出ないと発電できませんし、風力は風が吹かなかったら発電できません。やっぱり安定性という意味では火力発電も必要です。
ただ、化石燃料を用いた火力発電所を新設するということもCO2排出のことを考えたらハードルが更に上がっていくでしょうし、そうなればやっぱり木質バイオマスの存在が大事になります。
一方、木質バイオマスの場合の問題は燃料です。私たちは幸い今のところ燃料を調達できていますが、これには北海道という地の利もあります。地域によってはどこかで調達の限界が来るかもしれません。
この発電所は、木質バイオマス発電所の中では中規模の大きさなのですが、バイオマス発電所はだんだん地域の中の分散型に移行していくかなと考えています。
北海道の中では小さな町の単位で、その近隣から集められる木材だけを使い、その町で必要な分だけを発電して、余った熱はボイラーにまわして町の熱を供給するような、極めて小規模な分散型のモデルが出てきています。
大型のバイオマス発電所を建てて燃料を大量に集めてくる形から、その町の規模に合った小さいバイオマス発電を行う形も少しずつ出てきているようです。
これは「自給自足」に近い感じです。特に北海道は土地が大きくて人が分散して住んでいるので、この形が適している印象があります。その地域にあった規模で電気を作っていく、という形がこれから増えてくるかもしれません。
燃料の安定調達と、林業の今後について
木質バイオマス発電を続けるに当たって、最大の問題は燃料の安定供給です。
北海道の森林の「蓄積量」というものがあります。毎年木が成長する量から、年間の伐採量を引いたものなのですが、この蓄積量だけを見ると、実は毎年すごい量の木が増えています。
実はこの発電所をあと10個か20個作っても、木は引き続き増えていくほどの量が毎年増えています。
この蓄積量ですが、実際には山奥の方で林道がなくて、そもそもそこまで切りに行けないという木も含まれています。ただこれは、木の需要が上がれば伐採のコストが見合って林道がついたりしますから、だから供給量そのものは心配ないと考えています。
でも、それを支える人がいません。今、本当に林業の担い手がいません。高齢化も進んでいます。人の問題が深刻です。
そして、バイオマスとは本来捨てるものだった副産物だ、という問題もあります。
もし山がバイオマスの価格で全部の木を販売してしまったら、間違いなく赤字になってしまいます。その半分以上は主伐材、つまりメインの商材として販売するようなバランスで運営しないと、林業は回っていきません。
仮にバイオマスの需要が伸びてしまっても、山にあるすべての木をバイオマス用として出荷することができません。バイオマスばかり需要が伸びても、木材そのものの需要が伸びない限り、バイオマスの燃料に出来る木が切れない…というジレンマがあります。
日本の林業発展とバイオマス発電の関わり
だから、人の問題にせよ、木の需要の問題にせよ、バイオマス発電が持続していくためには、本質的には林業全体の発展がベースにあります。
木の需要が増えれば、林業の担い手も増えて出荷も増える。そのことで未利用材が増えて発電用の燃料も揃う、という形が理想です。
でも、例えば家を建てるにしても今の日本では輸入木材がメインです。日本にこれだけ木がいっぱいあるのに、なかなか日本の木が使われるケースが少なくなっているのが実情です。
輸入材は、大量に加工して完成度の高いものがたくさん入ってくるので、使いやすくて安いという側面があります。日本では現状、そこまでのことができていない。もちろん価格だけの問題ではありませんが、日本の木を使おうと思ってもらえるように林業全体を根本的に変えていく必要があるかもしれません。
日本人が、もっと日本の木を使おうという意識になってくれたら、林業も山林環境もバイオマス発電もきれいに循環していきます。そうした社会が実現できれば良いなと私たちは考えています。