林業から生まれた未利用木材を使って発電をする木質バイオマス発電は、森林や林業との関わりが切り離せません。このページでは、北海道の林業のことをご紹介していきます。
北海道の林業のパイオニアとして、創業100年以上の歴史を持つ株式会社イワクラの高橋賢孝さんに、北海道の林業の現状について伺いました。
お話:高橋さん(株式会社イワクラ)
北海道の森林の特徴
本州と北海道の森林で比較的に違うのは、まず北海道は国有林が55%と圧倒的に多いんです。10%くらいが道有林、残り35%くらいが市町村林と民有林なんです。
いっぽう本州ではこの逆で、国有林の方が少ないんです。
というのも、北海道は開拓がありましたよね。もともと土地の所有者がいない状態で屯田兵の人が入ってきたから、国有林化されてしまったみたいな所が、この原因としてはあるとおもいます。
他に北海道の林業の大きな特徴は、伐採した木の用途です。
本州の林業ですと、建築向けなどで使われる製材向けのもの(A材)や合板・集成材向けのもの(B材)が多いのですが、北海道では、製紙会社用に使われるパルプ材としての用途(C材)の出荷が多い。
これには、北海道には製紙会社が多いという事情があります。今でもあちこちにあります。それと、住宅向けの建材のマーケットが本州に比べると小さい、ということも原因の1つかもしれません。本州に比べたら大都市は札幌だけですからね。
本州に材を運ぶためには船を使わなければいけませんが、その輸送コストまで考えたら地続きのところでの需要を満たすような方向になってしまう。
このあたりが、本州の林業と比べると大きく変わっている点です。
本来であれば、1番太い材が1番高く売れるんです。でも残念ながら道内の需要が大きくないので、太い材を加工できる工場がほとんどない。
なので、丸太や製材としてそのまま出荷するのではなく、道内でサンギとかタルキなどの建築用のパーツ、また梱包材などに加工して出荷する…というようなことをやっている会社も多いです。
ここで、実際の樽前山国有林でのイワクラ作業班による林業作業の様子を動画でご紹介します。
(協力・株式会社イワクラ)
伐採の様子
ここでは間伐対象樹木は人力で伐採していくことが効率的なため、林業機械を使わずに伐採しています。
玉切り
伐採した木は「ハーベスタ」という高性能林業機械で一定の長さに切り分けます。玉切りと呼びます。
このとき、同時に枝葉もそぎ落とされていきます。これらの木を「グラップル」という重機で運びます。
運搬
玉切りされた木は「フォワーダー」という運材車を使って森林内木材集積所まで運搬されます。
ここから、トラックに乗せられ運ばれていきます。
バイオマス発電が、北海道の林業の新しい風に…
イワクラは創業104年(取材当時)、実は本州でもネームバリューはある企業です。
本州に行くと、例えば林野庁でもイワクラの名前は評価が高いんです。長くやっているのもあるし。会社に歴史があります。
ただ、先ほども述べたように、北海道の林業の構造は本州と比べて特殊な状況が続いています。
私はこの状況はある意味面白い、やりがいのあるものだと思います。でも、なかなか新しいことをやろうとしても、みんな腰が重かったのです。
北海道の林業って、面積はとても広いんだけど、出荷の出口が製紙会社メインになってどうしても製紙さんの動向に左右されてしまっている。
そこにバイオマス発電の話が来てくれました。
私はこの事業をやるときに言ってたのが「思いやりのある事業を発電所がやってくれ」ということです。
林業は正直だいぶ体力がなくなって新しいことをやりづらい状態になっているから、林業を育てるくらいの気持ちでやらなきゃだめだよと。
例えばイワクラは林地未利用材の活用を他に先駆けて、10年くらい前からやっています。最初は補助制度が無ければ成り立たない事業でしたが、今の林業に必要なのは新しい風です。
最初はコストや量の面での反対もあったのですが、今では補助無しでも事業として成り立つようになっていますし、他の事業所も実証を行うようになりました。この未利用材は今後苫電さんでも積極的に買い取ってもらえるようになるので、事業の拡大につながります。
イワクラでは、こうした新しい動きがもっと加速されて、北海道の林業がさらに活性化される事を望んでおり、その為にも今後も新たな集荷方法や輸送方法等を検討する事で、苫電さんを応援したいと思っています。
2.森を守り育てる「間伐」の重要性 のページへ